本研究では、名目賃金の粘着性が財政乗数に与える影響をTwo-agent new Keynesianモデルで検証する。主要な結果は下記のとおり。まず、名目賃金が完全に伸縮的な場合、流動性制約家計の割合が増加すると、Money-financed fiscal stimulus (MF)とDebt-financed fiscal stimulus(DF)の場合で乗数は上昇する。次に、名目賃金に粘着性がある場合、流動性制約家計の割合が増加すると、MFの乗数は大幅に減少する。さらに、名目賃金の粘着性と流動性制約家計が同時に存在する場合、MFレジームの財政乗数はDFレジームの乗数を上回る。また、減税のケースでは、流動性制約家計の割合が増加すると、MFレジームとDFレジームのケースで乗数が大きくなる。