内閣府「県民経済計算」は,地域経済の実態を把握する上で重要な基礎統計でありながら,年度の低頻度データしか利用できず,積極的な利用が妨げられている。この課題に対して,本稿では関西地域を対象に県民経済計算の支出側から4系列の四半期化を試みた。補助系列には内閣府「地域別支出総合指数」を用いた。さらに全国四半期GDPと関西の対全国支出シェアからベンチマーク系列を作成し,これと比較した。結果,次のことが確認された。まず,民間住宅,民間企業設備,公的固定資本形成では支出シェアにトレンドが見られず,作成系列とベンチマーク系列との変動差は小さかった。一方,民間最終消費支出では支出シェアに低下トレンドが見られ,両者の差が大きくなった。以上の結果は,四半期化における支出シェアのトレンドの重要性を示している。明らかなトレンドがある場合,地域の四半期ないし月次動向を反映する代替的な統計を用いて推計することが望ましい。